
ビデオカメラや編集ソフトを使っていると、
- 29.97fps
- 59.94fps
- 23.98fps
という、なんとも中途半端な数字を目にすることがあります。
「どうして30fpsや60fpsじゃないの?」
映像を始めたばかりの頃、多くの人が一度は疑問に思うはずです。
実はこれ、1953年のカラー放送誕生のときに生まれた数字であり、技術者たちの知恵と工夫の結晶なのです。
もともとは30fps・60フィールドだった
最初のテレビ放送(モノクロ放送)は、
- 30フレーム/秒
- インターレース方式で60フィールド/秒
という、とてもキリの良い規格でした。
当時のアメリカでは家庭用電源が60Hzだったため、その周期に合わせることで映像のちらつきやノイズを抑えられるというメリットもありました。
つまり、
30fps・60フィールドはとても理にかなった数字だったのです。
カラー放送で大問題発生!
1953年、テレビは白黒からカラーへ進化します。
ところが、ここで大きな問題がありました。
すでに何百万台もの白黒テレビが普及していたのです。
もし新しいカラー放送が古いテレビで映らなくなれば、大混乱になります。
そこで技術者たちは、
「カラー放送なのに、古い白黒テレビでもちゃんと映る」
という、とても難しい条件をクリアしなければなりませんでした。
色の情報をどうやって追加する?
カラー放送では、
今まで送っていた「明るさ」の情報に加えて、
「色」の情報も一緒に送る必要があります。
しかし電波の帯域は限られています。
そこで、
明るさの信号の中に色の情報をうまく重ねる
という非常に巧妙な仕組みが考えられました。
ところが…
音声と色がケンカする!
色の信号を追加すると、
音声信号と干渉してしまい、
画面に
- ドット模様
- ハムノイズ
- ビートノイズ
などが発生することが分かりました。
もちろん放送品質としてはNGです。
解決策は「ほんの少しだけ遅くする」
技術者たちは様々な方法を検討しました。
- 音声周波数を変える?
- 色信号を変える?
- 放送方式を変える?
しかし、一番影響が少なかった方法は
映像全体の速度をほんの少しだけ遅くすることでした。
その結果、
60Hzを1000/1001倍に変更します。
つまり
60 × 1000 ÷ 1001
となり、
59.94Hz
になりました。
フレームレートも同様に
- 30fps → 29.97fps
- 24fps → 23.976fps
へと変化しました。
「たまたま59.94」ではない!
「59.94って中途半端だけど、偶然その数字になったの?」
と思われるかもしれません。
実はそうではありません。
音声周波数やカラー信号、白黒テレビとの互換性など、
さまざまな条件を満たすように計算した結果、
1000/1001倍にすると最も都合が良かったのです。
つまり、
59.94は偶然ではなく、理論的に導き出された数字だったのです。
今でも59.94が残っている理由
現在はデジタル放送の時代です。
技術的には60fpsで放送することもできます。
それでも、
- 放送設備
- 編集システム
- 映像ライブラリ
- 過去との互換性
を維持するため、
現在でも
- 23.98p
- 29.97p
- 59.94i
- 59.94p
が広く使われています。
ソニーやパナソニックなどの業務用ビデオカメラに59.94という設定があるのは、この歴史を受け継いでいるからなのです。
タイムコードにも影響が…
実は59.94(29.97fps)は、
編集マン泣かせでもあります。
29.97fpsは30fpsより約0.1%遅いため、
そのままフレームを数えていくと、長時間の収録では時計の時間とズレてしまいます。
そこで放送業界では
ドロップフレームタイムコード
という特殊なタイムコードを使い、実際の時間とのズレを補正しています。
普段何気なく見ている「DF」「NDF」という表示も、この59.94fpsが生んだ歴史の名残なのです。
まとめ
一見すると意味が分からない「59.94fps」。
しかし、その裏には
「古いテレビでも見られるカラー放送を実現したい」
という1950年代の技術者たちの努力が詰まっています。
普段ビデオカメラの設定画面で何気なく選んでいる59.94という数字も、実は70年以上前の放送技術の歴史を今も受け継いでいるのです。
💡ワンポイント
59.94fpsは「中途半端な数字」ではありません。
カラー放送と白黒テレビを共存させるために生まれた、技術者たちの知恵の結晶だったのです。
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