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ゲインを上げるとなぜノイズが増える?~S/N比から理解するカメラの仕組みと、最新カメラが暗所に強い理由~【お役立ちコラム】

約6分

「暗いからゲインを上げてください。」

映像制作の現場では当たり前のように使われるこの言葉。しかし、「なぜゲインを上げるとノイズが増えるのか?」と聞かれると、意外と説明できる人は少ないかもしれません。

今回は、映像制作スタッフなら知っておきたい「S/N比(エス・エヌ比)」の基本と、最近のカメラが高感度でも綺麗な理由について解説します。


光はまず電気信号になる

ビデオカメラの内部では、次のような流れで映像が作られています。

被写体
 ↓
レンズ
 ↓
撮像素子(CMOS)
 ↓
電気信号へ変換
 ↓
増幅(ゲイン)
 ↓
画像処理
 ↓
映像として記録

撮像素子(CMOS)は、レンズから入ってきた光を受け取り、それを電気信号へと変換しています。

つまり、カメラは「光」をそのまま記録しているのではなく、一度「電気」に変換してから映像を作っているのです。


実はノイズも一緒に発生している

ところが、この電気信号には必ずノイズが混ざります。

例えば、本来取り込みたい信号が1000だとすると、

信号 1000
ノイズ 20

のような状態になります。

ここで重要なのが、
Signal(シグナル・信号)

Noise(ノイズ)
の比率です。

これを
S/N比(Signal to Noise Ratio)
と呼びます。

S/N比が高いほど、ノイズが少なく綺麗な映像になります。


暗い場所では何が起きる?

暗い場所では、そもそも撮像素子に届く光が少なくなります。

すると、

信号 100
ノイズ 20

のようになります。

ノイズの量はあまり変わらないのに、信号だけが少なくなるため、ノイズが目立ちやすくなるのです。


ゲインを上げるとは?

では、ゲインを上げると何が起こるのでしょうか。

例えば、

信号 100
ノイズ 20

だったものを増幅すると、

信号 1000
ノイズ 200

になります。

ここで大切なのは、
信号だけを増やしているわけではない
ということです。

電気信号を増幅しているため、ノイズも一緒に大きくなってしまいます。

これが、「ゲインを上げるとノイズが増える」
と言われる理由です。


最近のカメラはなぜ高感度でも綺麗なの?

「昔のカメラはザラザラだったのに、最近のカメラは+9dBくらいなら気にならない。」
そう感じたことはありませんか?
これは一つの技術だけではなく、実は複数の技術が同時に進歩した結果なのです。

① 撮像素子そのものが進化した

現在のCMOSセンサーは、

  • 光をより多く集められる
  • 回路のノイズが少ない
  • 読み出し性能が向上

など、大幅に進化しています。
つまり、最初からS/N比が良くなっています。


② 光を効率よく利用できるようになった

センサー表面には小さなマイクロレンズがあり、光を効率よく集めています。
同じ暗さでも昔より多くの光を取り込めるため、信号そのものが強くなっています。


③ 増幅回路も高性能になった

ゲインを上げるための回路(アンプ)も昔より大幅に進化しています。
余計なノイズを発生させにくくなり、高感度でも画質を維持しやすくなりました。


④ 画像処理エンジンが非常に優秀

現在のカメラには高性能な画像処理エンジンが搭載されています。
メーカーによって名称は異なりますが、

  • Sony:BIONZ
  • Panasonic:Venus Engine
  • Canon:DIGIC

などが代表例です。

これらは映像を解析し、
「これはノイズだ」
と判断した部分を自然に除去しています。

最近ではAI技術を活用したノイズリダクションも採用され、高感度撮影でも驚くほど自然な映像が得られるようになりました。


つまり「最近のカメラが綺麗」なのは全部のおかげ!

高感度性能が向上した理由は、

  • センサー性能の向上
  • S/N比の改善
  • 光を集める能力の向上
  • 増幅回路の進化
  • 画像処理技術の進歩
  • ノイズリダクション技術

これらすべてが積み重なった結果なのです。
どれか一つだけが優秀になったわけではありません。


それでも照明が大切な理由

「じゃあ暗くてもゲインを上げればいいじゃないか。」
と思うかもしれません。

しかし、どれだけ最新のカメラでも、
撮影時に存在しなかった情報を後から作り出すことはできません。

暗い場所では、

  • 色の情報
  • 細かな質感
  • 階調

などが失われます。
ノイズは消せても、失われた情報を完全に戻すことはできません。

だからこそプロの現場では、
まずは十分な照明を用意し、それでも足りない場合にゲインを使う
という考え方が基本なのです。


ワンポイントアドバイス

「ゲインを上げる」のではなく、「まず光を増やす」。

最新のカメラは驚くほど高性能になりましたが、画質を決める一番大きな要素は、今も昔も撮像素子にどれだけ良い光を届けられるかです。

暗い場所で無理にゲインを上げるより、照明を少し追加するだけで、映像は驚くほど美しくなります。
それが、プロの映像制作現場で今も変わらない基本なのです。


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