
先日、愛知県名古屋市内の小学校で運動会のライブ配信を担当させていただきました。
当初の予定から雨天による延期がありましたが、無事に開催され、私たちも約3時間にわたるライブ配信を行うことができました。
今回は、そんな運動会のライブ配信で実際に使用した機材や、現場で気づいたこと、そして次回に向けた改善ポイントをご紹介したいと思います。
ライブ配信というと、カメラやスイッチャーなどの映像機材に目が向きがちですが、屋外での配信には、それ以外にも考えなければならないことがたくさんあります。
そして今回、私たちが最も苦戦したのは、意外な相手でした。
モバイル回線だけで約3時間のライブ配信に挑戦
今回、まず懸念していたのがインターネット回線です。
ライブ配信では、安定性を考えると有線の固定回線を利用するのが基本です。
しかし、学校などの施設ではセキュリティ上の理由から、外部業者がネットワークを利用できない場合もあります。
今回はそのような事情もあり、モバイル回線を利用して配信することになりました。
当社ではドコモのモバイルWi-Fiルーターを所有していますが、約3時間のライブ配信を1回線だけに頼るのは、やはり不安が残ります。
そこで今回は、モバイルWi-Fiのレンタルサービス「WiFiBOX」を追加で利用しました。
WiFiBOXは駅やホテルなどに設置された専用ボックスから端末を借りられるサービスです。
今回利用した端末はソフトバンクの4G回線に接続されていました。
ドコモの5G回線とソフトバンクの4G回線。
この2つを「Speedify」というソフトウェアで束ね、通信の安定性を高める構成にしました。
実際に配信してみると、意外なことにWiFiBOX側が多くの通信を担当している場面もありました。
5Gだから必ずしも4Gより安定しているとは限らない、ということを改めて実感しました。
Speedifyが配信を支えてくれた
今回の配信設定は、映像ビットレートを6Mbps、フレームレートを29.97fpsとしました。
配信中、YouTubeから一時的に通信状態に関する警告が表示される場面もありましたが、幸い配信を中断することなく最後までお届けできました。
配信後にSpeedifyの統計を確認すると、当日のストリーム救済回数は99回、シームレスなフェイルオーバーは11回と記録されていました。
これらの数値がそのまま99回の配信停止危機を意味するわけではありませんが、通信を保護する機能が実際に働いていたことがわかります。
モバイル回線によるライブ配信では、単純な通信速度だけでなく、通信の安定性やバックアップ回線の確保が重要です。
今回の経験から、固定回線が使えない現場では、異なる通信事業者の回線を複数用意することの有効性を改めて感じました。
WiFiBOXも、必要なタイミングで借りられる便利さを含め、今後の有力な選択肢になりそうです。
新しく導入したインカムも活躍
今回の運動会では、Hollyland製のワイヤレスインカムも新たに導入しました。
カメラ構成は、手持ちカメラ2台と固定カメラ1台の合計3台。
手持ちカメラの映像はワイヤレスでスイッチャーに送り、状況に応じて切り替えています。
運動会では競技によって撮影位置や狙う被写体が変わるため、カメラマン同士の連携が重要です。
今回、インカムを使ってカメラマン間で撮影位置などを確認しましたが、音声も明瞭で、性能面では十分に満足できるものでした。
一方で、実際に運用してみると、スイッチャーとの情報共有にもインカムを活用できれば、さらに円滑な撮影ができると感じました。
長年一緒に撮影しているカメラマン同士は、言葉を交わさなくても相手の動きをある程度予測できることがあります。
しかし、スイッチャーにとっては、各カメラが次にどのような映像を狙っているのかを知ることが、切り替えの判断に役立ちます。
今後はカメラマンとスイッチャーを含めた連絡体制を、さらに充実させていきたいと思います。
ワイヤレス映像伝送は、わずか10cmで変わる?
手持ちカメラの映像伝送には、HollylandのMARS 300を使用しました。
配信開始直後、1台のカメラから送られてくる映像が一時的に不安定になる場面がありました。
受信機は三脚を使って高い位置に設置していたのですが、試しにその高さを10cmほど上げたところ、状態が改善しました。
たった10cm。
しかし、無線通信ではこうしたわずかな位置の違いが受信状態に影響することがあります。
電波は障害物だけでなく、周囲の建物や地面などからの反射によっても影響を受けます。
今回の原因を特定できたわけではありませんが、受信機の位置を少し調整するだけでも改善する可能性があるという、実践的な経験になりました。
今後は配信開始前の確認時に、実際の撮影位置からの伝送状態をより丁寧にチェックしたいと思います。
最大の敵は、まさかの10月の太陽!
さて、今回の配信で最も印象に残ったこと。
それはインターネット回線でも、ワイヤレス映像伝送でもありません。
太陽です。
10月下旬ということもあり、真夏ほどの暑さは想定していませんでした。
ところが、今回のスイッチング席は直射日光が非常に強く当たる場所。
配信開始前から機材に熱がこもり、モニターの映像もかなり見づらい状態になってしまいました。
もちろん、モニターには遮光フードを取り付けています。
さらに、学校から傘をお借りして日陰を作るなどの対策も行いました。
それでも、明るい屋外では画面の確認が難しい場面がありました。
モニターに直接日光が当たらなくても、周囲からの光や地面からの照り返しによって視認性が低下することがあります。
特に今回の設置場所はアスファルトの上。
日差しの強さに加えて、地面からの照り返しも影響していた可能性があります。
屋外配信では、カメラや通信機材の準備だけでなく、スイッチングを行う場所そのものの環境整備が重要だと痛感しました。
次回はスイッチング席に屋根を!
今回の経験から、次回の屋外配信に向けて検討しているのが、簡易タープの導入です。
スイッチング機材はコンパクトなアルミラックにまとめているため、小型のワンタッチタープでも作業スペースを確保できそうです。
屋根で直射日光を遮り、必要に応じてサイドシートを使用すれば、モニターの視認性向上や機材の温度上昇対策が期待できます。
ただし、屋外でタープを使用する場合は風への対策も欠かせません。
特に学校のグラウンドでは、児童や保護者の皆様の安全が最優先です。
設置場所や固定方法、風の状況を十分に確認したうえで、安全に運用できる方法を検討していきたいと思います。
現場で得た経験を、次の撮影へ
今回の運動会ライブ配信は、途中で通信状態に関する警告が出たり、映像伝送の調整が必要になったりする場面もありましたが、最後まで配信を行うことができました。
その一方で、実際の現場だからこそ気づく改善点もたくさんありました。
異なるキャリアのモバイル回線を組み合わせることの有効性。
インカムによるスタッフ間の連携。
ワイヤレス映像伝送における受信機の設置位置。
そして、屋外スイッチング席の遮光・遮熱対策。
どれも机上の検討だけではわからない、実際の撮影から得られた経験です。
ライブ配信では、事前の準備はもちろん大切ですが、現場の状況に合わせて柔軟に対応することも重要です。
今回得られた経験を次回の撮影に活かし、より安定した、安心してご覧いただけるライブ配信を目指していきたいと思います。
それにしても、10月下旬の太陽。
少々甘く見ておりました。
次回は、通信回線だけでなく日陰もしっかり確保して臨みたいと思います!
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