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F1より明るいレンズがある!?「 F0.95やF0.7はどういう仕組みなのか」【お役立ちコラム】

約5分

「F1.4より明るいレンズがあるらしい。」
「F0.95って見たことがある。」
「えっ!? F値って1が限界じゃないの?」

実は私も昔はそう思っていました。

「開放」と聞くと、絞り羽根が完全に開いた状態を想像し、
『それ以上は開かないのだから、F1が最大じゃないの?』

と思っていたのです。

しかし、光学の世界では少し考え方が違います。


「開放」と「F値」は同じではない

まず知っておきたいのが、
「開放」と「F値」は別の概念だということです。

開放とは、
そのレンズが持つ一番明るい状態のこと。

例えば、

  • F4のズームレンズなら開放はF4
  • F2.8のレンズなら開放はF2.8
  • F1.4のレンズなら開放はF1.4

つまり、
「開放」という言葉はレンズごとに違います。

一方でF値は、
レンズの明るさを表す数値です。

F値そのものには、
「1が最大」というルールはありません。


F値は「焦点距離÷絞りの直径」

F値は、
焦点距離 ÷ 絞りの直径
という計算で決まります。

例えば50mmレンズなら、

  • F2 → 絞りは約25mm
  • F1 → 約50mm
  • F0.95 → 約52.6mm
  • F0.7 → 約71mm

つまり、
F1より小さい数字というのは、
焦点距離よりも大きな開口部を持っている
という意味なのです。


「50mmなのに穴が70mm?」

ここで不思議に思うかもしれません。

「50mmレンズなのに、穴が71mmってどういうこと?」

実はレンズは、
焦点距離と同じ大きさで作る必要はありません。

前玉(レンズ前面)は、
もっとずっと大きくできます。

だからF0.95のレンズを見ると、
まるで望遠レンズのように太いものが多いのです。


なぜF0.95は高いの?

ここで、以前の記事の内容とつながります。

F0.95では、
レンズの端の端まで光を使います。

ところが、
レンズの外側ほど光は暴れやすく、

  • 色収差
  • 球面収差
  • コマ収差

などが増えてしまいます。

メーカーは、
その暴れる光まできれいに一点へ集めなければなりません。

だから、
特殊なガラスを何枚も使い、
ミクロン単位で組み立て、
何十枚ものレンズで補正しているのです。

つまり、
F値を1より小さくすることは、光学設計の難易度を一気に引き上げることでもあります。


F0.7という伝説のレンズ

さらに有名なのが、
Carl Zeiss Planar 50mm F0.7
というレンズです。

もともとはNASAが暗い環境での撮影用に開発したもので、
後に映画監督スタンリー・キューブリックが、
映画『バリー・リンドン』で、
ろうそくの明かりだけを使った撮影に使用しました。

「F1より明るいレンズ」は、
実際に存在し、
しかも映画史にも名を残しているのです。


開放=「そのレンズの限界」

ここで考え方を整理すると、
「開放」とは、
そのレンズがこれ以上開けられない状態を指します。

だから、

  • F4レンズの開放はF4
  • F2.8レンズの開放はF2.8
  • F0.95レンズの開放はF0.95

となります。

つまり、
「開放」は状態の名前。
「F値」は明るさを表す数値。

この違いを知ると、
「F1より明るいレンズがある」という話も自然に理解できます。


まとめ

「F1より明るいレンズなんてあるの?」

答えは、あります。
F値には「1が限界」という決まりはありません。

F値は、
焦点距離と開口部の大きさの比率を表した数字だからです。

ただし、F値を1より小さくするには、
巨大なレンズ、
特殊なガラス、
極めて高い加工精度、
そして高度な光学設計が必要になります。

だからF0.95やF0.7といったレンズは、
単に「明るいレンズ」ではなく、
メーカーの技術力を象徴する特別な存在なのです。


編集後記

私は長い間、「開放=絞り羽根が全開だから、F1が限界なのだろう」と思っていました。

しかし実際には、「開放」はそのレンズごとの状態を表す言葉であり、F値そのものには上限も下限もありません。

光学を学ぶと、「そういうものだ」と思っていたことが、一つずつ理屈でつながっていきます。
そして気づけば、レンズは単なる撮影機材ではなく、光を操るために極限まで計算された精密機械なのだと実感できるようになるのです。


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