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3000円のカレーは何でできている?──答えは「冷たいスプーン」だった【お役立ちコラム】

約6分

先日、撮影の帰りにスタッフと食事をすることになった。

帰り道にロイヤルホストがあったので、
「久しぶりにロイホでも行くか」

くらいの軽い気持ちで入った。

ロイヤルホストといえば、ガストやサイゼリヤなどと比べると、ちょっと高めのファミレス。
そんなイメージは昔から持っていた。

とはいえ最後に入ったのは、もう10年以上前。
久しぶりにメニューを開いてみて驚いた。

高い。
思っていた以上に高い(笑)

55周年を記念したカレーのセットがあったので注文してみたのだが、価格は約3000円。
カレーに3000円。

なかなかである。
では、3000円のカレーはいったい何でできているのだろう。

牛肉だろうか。
米だろうか。
スパイスだろうか。

もちろん、それらも正解だ。

実際、出てきたカレーにはゴロッとした牛肉が入っていて、しっかり食べ応えがある。
ご飯も普段よく見る白米ではなく、細長い米が使われていて、見た目からしてちょっと特別感がある。

味もおいしい。
なるほど。
確かに普通のファミレスのカレーとは違う。

……でも、僕が一番気になったのはそこではなかった。


スプーンが冷たい。

料理と一緒に出てきたナイフ、フォーク、スプーン。
手に取った瞬間に気づいた。

冷たい。

カトラリーが冷やされているのである。
これが妙に印象に残った。

普通のカレー屋で、
「おお! スプーンが冷えてる!」
と思った記憶なんてない。

そこで考えた。

スプーンを冷やすと、カレーはおいしくなるのだろうか?

たぶん、そんなに関係ない(笑)
熱々のカレーを食べるのだから、むしろ冷たいスプーンである必然性すらよく分からない。

でも、それでいいのだ。

重要なのは、
冷たいスプーンによってカレーがおいしくなるかどうかではない。

「この店、なんか違うぞ」
と思わせることなのだ。


ビールは、口に入る前からうまい

よく考えれば、似たような経験はある。
暑い日に居酒屋へ行って、生ビールを注文する。
店員さんが持ってきたジョッキを握ると、キンキンに冷えている。

その瞬間、
うまそう!!
と思う。

まだ飲んでいない。
舌には一滴も触れていない。
それなのに、もうおいしい。

つまり僕たちは、舌だけで食事をしているわけではない。

料理の見た目を見る。
香りを嗅ぐ。
食器を触る。
店内の照明を見る。
椅子に座る。
店員さんの話し方を聞く。

そして、
「ここはちょっといい店なんだ」
と感じる。

その解釈を含めて、料理を食べている。


3000円のカレーは、牛肉と米だけではできていない

そう考えると、約3000円という価格の見え方が少し変わってくる。

3000円のカレーを原材料だけに分解してしまえば、
「牛肉がいくら」
「米がいくら」
「ルーがいくら」
という話になる。

すると当然、
「カレーに3000円は高くない?」
となる。

でも、3000円の中身はそれだけではない。

落ち着いた店内。
少し上質に見える食器。
丁寧な接客。
料理の盛り付け。
メニューの見せ方。
椅子やテーブル。

そして、
冷たいスプーン。

それら全部を合わせて、
「ここで食事をした」
という一つの体験が作られている。

つまり、3000円のカレーは、
牛肉と米とスパイスと、冷たいスプーンでできている。

もちろん本当にスプーン代が何百円も上乗せされているという話ではない。

スプーンを冷やすという小さな演出まで含めて、
「3000円を払ってもいい食事だった」
と思わせるための体験が設計されているということだ。


高級感とは「高級な材料」のことではない

これは商売をする上で、とても勉強になる。
商品の価格を上げようとすると、つい商品そのものを豪華にしようと考えてしまう。

もっと高い材料を使おう。
もっと性能を上げよう。
もっと機能を追加しよう。

もちろん、それも重要だ。
でも、人が感じる価値は商品の中だけに存在しているわけではない。

商品を受け取るまでの体験。
説明の仕方。
スタッフの振る舞い。
包装。
空間。
触った感触。

そういう、一見すると商品の本質とは関係なさそうなものまで含めて、人は価格を判断している。

だから高級感というものは、
高級なものを使えば生まれるわけではない。

「これは大切に扱われているものだ」
と感じさせる細部の積み重ねによって生まれるのだと思う。


我々が欲しいのは「納得」なのだ

結局、価格というのは不思議なものだ。

3000円だから高いのではない。
1000円だから安いのでもない。

3000円を払って、
「3000円払っただけのことはあった」
と思えれば満足する。

逆に1000円でも、
「これに1000円か……」
と思えば高い。

つまり我々が本当に欲しいのは、
安さではない。
納得なのだ。

料理そのものがおいしい。
牛肉もしっかりしている。
盛り付けもいい。
店内も落ち着いている。
接客も丁寧だ。

そしてスプーンまで冷たい。

一つひとつは小さなことでも、それらが積み重なって、
「なるほど。だからこの価格なのね」
という納得を作っていく。

だから極端なことを言えば、
冷たいスプーンでカレーがおいしくなるかなんて、どうでもいいのである。

冷たいスプーンを握った瞬間、
「普通のファミレスとはちょっと違う」
と感じた。

その時点で、そのスプーンはちゃんと仕事をしている。

そしてこれは飲食店だけの話ではない。
自分たちが商品やサービスを売るときにも、
「商品の品質を上げる」
だけではなく、
お客さんがその価格に納得するまでの体験を作れているだろうか。
と考える必要があるのだと思う。

メールの文章。
電話対応。
スタッフの服装。
商品の渡し方。
パッケージ。
説明書。
ほんの小さな気遣い。

そこに、
自分たちの仕事における「冷たいスプーン」はないだろうか。

3000円のカレーを食べながら、そんなことを考えた。
ロイヤルホスト。
高かった。
でも、おいしかった。
そして何より、商売の勉強になった。

約3000円でカレーを食べて、ブランディングの授業まで受けたと思えば安いのかもしれない。

なるほど……これが「納得」か。

……まあ、だからと言って頻繁に行けないけど(笑)


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