
「もっと映像の勉強をしよう。」
そう思って学び始めたはずなのに、気が付けば心理学や哲学、神経科学、歴史の本を読んでいる。
「なんでこんな遠回りをしているんだろう?」
そう思ったことはありませんか?
でも実は、その”遠回り”こそが、本当の近道なのかもしれません。
一流は、人間を学ぶ
ピアニストの清塚信也さんは、昔テレビ番組内でこんな感じの話をしていました。
ショパンを演奏する時は、ただ楽譜通りに弾くのではない。
ショパンの手の大きさはどうだったのか。
どんなピアノを弾いていたのか。
どんな生活を送り、何を感じていたのか。
まるで考古学のように、当時の時代背景まで掘り下げて演奏するのだそうです。
ピアノを極めようとした結果、たどり着いたのは「ショパンという人間」を学ぶことでした。
編集も同じ
映像編集も似ています。
最初は、
「カットをつなぐ技術」
を学びます。
しかし経験を積むほど、
「ここで切ると、なぜ気持ちいいのだろう?」
という疑問が生まれます。
そして調べていくと、
人間は未来を予測しながら世界を見ている。
感情にはリズムがある。
脳は出来事をまとまりとして理解している。
そんな神経科学や心理学へとつながっていきます。
編集ソフトの使い方だけでは、決して見えてこない世界です。
技術の先には、人間がいる
料理人は、食材だけでなく文化や季節を学びます。
建築家は、建物だけでなく風土や歴史を学びます。
医師は、病気だけでなく患者さんの暮らしを学びます。
どの分野でも、技術を極めようとすると、最後は「人間とは何か」という問いにたどり着きます。
専門を深く掘っていたはずなのに、いつの間にか専門の外へ出ている。
それは道を外れたのではなく、本質へ近づいている証拠なのです。
専門家とは何か
そんなことを考えていた時、心に残る言葉に出会いました。
「専門家とは、自分の専門の外にある知識の重要性を知っている人である。」
この言葉が本当なら、
専門家とは、専門知識をたくさん持っている人ではありません。
「自分の専門だけでは足りない」と知っている人なのです。
技術だけでは届かない。
だから歴史を学ぶ。
心理学を学ぶ。
哲学を学ぶ。
音楽を学ぶ。
その一つひとつが、巡り巡って自分の専門へ戻ってくる。
おわりに
若い頃は、
「もっと映像技術を知らなければ。」
と思っていました。
でも今は少し違います。
人を知れば、映像が変わる。
歴史を知れば、構図が変わる。
心理学を知れば、編集が変わる。
哲学を知れば、作品の意味が変わる。
だから学ぶことに無駄はありません。
専門を極めるとは、専門という小さな枠に閉じこもることではない。
世界を知り、人間を知り、そのすべてを持って、もう一度自分の専門へ帰ってくること。
それが、本当の「極める」ということなのかもしれません。
専門を極めるとは、自分の専門を深く掘ることではない。
専門を取り巻く世界を学び、その世界ごと理解して、もう一度専門へ帰ってくることである。
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