
「理屈はよく分からないけど、なぜかうまくいく。」
そんな話を聞くと、少し怪しく感じるかもしれません。
でも実は、科学や技術の歴史を振り返ると、「まず再現性を確認し、その後で理由を解明する」という流れは珍しくありません。
飛行機は飛んでから理由を磨いた
ライト兄弟は飛行機を飛ばしました。
もちろん理論もありましたが、現代のように空気の流れを完全に理解していたわけではありません。
風洞実験を繰り返し、「この形なら飛ぶ」という再現性を積み重ねた結果、飛行機は実用化されました。
理論は、その後さらに発展していきました。
磁気ネックレスも少し似ている
磁気ネックレスは「血液中の鉄が磁石に引っ張られるから効く」という説明を耳にすることがあります。
しかし現在では、その説明は科学的には支持されていません。
一方で、「肩こりが軽くなった」という臨床データもあり、医療機器として販売されています。
つまり、
「効く可能性はある。でも、なぜ効くのかはまだ完全には分かっていない。」
という少し不思議な立ち位置なのです。
映像制作も同じ
映像の世界でも、
「この編集の方が感動する。」
「この音楽の入り方が心に残る。」
という経験則があります。
最初から理由が分かっているわけではありません。
何度も作品を作り、「この演出は伝わる」という再現性を積み重ね、その後で心理学や映像理論として分析されていくことも少なくありません。
実は「完全には分かっていません」。
また出ました、「再現性はあるけど、理由はまだ議論中」というパターンです(笑)。
音楽のメジャーコード・マイナーコード
- ハッピーバースデーを短調(マイナー)で弾くと、なんだか不気味になります。
- 葬送曲を長調(メジャー)で弾くと、妙に明るくなってしまいます。
これは世界中でかなり再現性があり、多くの人が同じように感じます。
でも、「なぜそう感じるのか」はいくつかの説があります。
① 倍音・音響学の説
長調の和音は、倍音(自然に含まれる音)がきれいに重なりやすく、耳に安定して聞こえます。
短調はその重なり方が少し複雑で、緊張感や切なさを感じやすいという考えです。
ただ、これだけでは説明しきれません。
② 人間の声の説
人は嬉しいとき、
- 声が高くなる
- 抑揚が大きくなる
悲しいときは、
- 声が低くなる
- 抑揚が少なくなる
音楽は、この人間の話し方や感情表現を真似して発展したため、長調は明るく、短調は悲しく感じるようになったという説があります。
これは心理学者の間でも比較的有力な考え方です。
③ 文化の学習説
生まれたばかりの赤ちゃんは、大人ほど長調・短調を区別しません。
また文化によっては、西洋音楽ほど「長調=楽しい、短調=悲しい」と結びついていない例もあります。
つまり、
「生まれつき」だけではなく、「育つ中で学んでいる部分」もある
ということです。
実は映像でも同じですよね
例えば、
- オレンジ色の夕焼けは温かい。
- 青い照明は冷たい。
- 手持ちカメラは緊迫感。
- ゆっくりしたパンは落ち着く。
こういう「文法」はあります。
でも誰かが最初に
「青い照明は悲しいから使おう!」
と決めたわけではありません。
たくさんの作品を通して、
「こうすると多くの人がこう感じるらしい」
という再現性が積み重なり、映像理論になっていった面が大きいのです。
再現できることが科学の第一歩
科学では「分からないからダメ」ではありません。
大切なのは、
「誰がやっても同じ結果になるか。」
それが確認できれば、あとは世界中の研究者が「なぜだろう?」と原因を探し始めます。
仕組みは後からでも構いません。
まずは現象を認め、再現性を確かめる。
それこそが科学のスタートラインなのです。
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