
前回の記事では、ブラウン管テレビや蛍光灯が、人間には見えないほど高速で点滅していることをご紹介しました。
では、今の液晶テレビやLED照明も同じなのでしょうか?
答えは、
「昔とは仕組みがまったく違う」です。
ブラウン管は「描いていた」
昔のブラウン管テレビは、電子ビームが画面を左から右へ、上から下へと高速で走り回り、映像を描いていました。
画面全体を一度に表示していたわけではなく、1本のペンで何度も何度も描き直していたようなものです。
そのため、一度光った場所はすぐ暗くなり、また次の瞬間に描き直されます。
だから高速で点滅していたのです。
液晶テレビは「窓」を開け閉めしている
液晶テレビは、名前の通り「液晶」が主役です。
しかし、液晶そのものは光っていません。
後ろにあるLEDバックライトの光を、
通すか、通さないか。
液晶はまるで小さなブラインドやカーテンのような役割をしています。
つまり、ブラウン管のように画面を描き直しているわけではありません。
画面は基本的に表示され続けています。
有機ELは画面そのものが光る
さらに進化したのが有機ELです。
こちらは液晶と違い、画面の一粒一粒が自分で光ります。
そのため、
- バックライトが不要
- 真っ黒な部分は本当に光っていない
- コントラストが非常に高い
という特徴があります。
「液晶は窓。」
「有機ELは電球。」
そんなイメージをすると分かりやすいかもしれません。
LED照明は点滅しているの?
ここで意外な事実があります。
LEDは「点滅しない照明」と思われがちですが、
実は製品によります。
明るさを調整するために、高速でON・OFFを繰り返しているLED照明も少なくありません。
これをPWM制御といいます。
人間の目では見えませんが、
スマートフォンで撮影すると黒い横縞が流れたり、スローモーションで撮ると点滅して見えたりすることがあります。
映像撮影で「フリッカー」が問題になるのは、このためです。
撮影用LEDはなぜ高い?
映像用のLEDライトが家庭用照明より高価なのには理由があります。
撮影用ライトは、カメラで撮影してもチラつかないよう、
- 非常に高速な制御
- 安定した電流で点灯
- 明るさを変えてもフリッカーが出にくい設計
など、映像制作に適した工夫が数多く盛り込まれています。
だからプロの現場では、高価な照明が選ばれるのです。
「60Hz」の時代から「自由な時代」へ
ブラウン管テレビや蛍光灯は、家庭の電気(50Hz・60Hz)と深い関係がありました。
しかし現在の液晶テレビや有機ELテレビ、LED照明は、内部で電子回路が細かく制御しています。
そのため、「家庭の電気に合わせるしかない」という制約は昔よりずっと少なくなりました。
技術の進歩によって、私たちは昔より美しく、ちらつきの少ない映像や照明を手に入れたのです。
映像技術は「制約との戦い」の歴史
振り返ってみると、映像技術の歴史は、制約を一つひとつ乗り越えてきた歴史でした。
ブラウン管、液晶、有機EL、LED。
どれも「より自然に見せたい」「もっと美しく映したい」という技術者たちの挑戦から生まれています。
普段何気なく見ているテレビや照明も、その裏側には何十年にもわたる試行錯誤と工夫が隠されているのです。
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