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無知の知──「答え」を探す学問と、「道」を歩く文化【お役立ちコラム】

約4分

「飛行機はなぜ飛ぶのか。」

人類は最初からその答えを知っていたわけではありません。
ライト兄弟は何度も実験を繰り返し、飛んだという事実を積み重ね、その後に空気力学が発展していきました。

映画も同じです。
「なぜ人はこの映像に感動するのか。」

誰かが最初から知っていたわけではありません。

数え切れない作品が作られ、多くの観客が涙を流し、笑い、驚き、その積み重ねから映画理論や映像文法が生まれていきました。

人類は多くの場合、
結果が先にあり、理由は後から見つかる。

そんな歩み方をしてきました。


「知る」とは何だろう

哲学者ソクラテスは有名な言葉を残しました。

「無知の知」

一見すると、
「私は何も知りません。」
という謙遜のようにも聞こえます。

しかし、本当に伝えたかったのは違います。
「知っていると思い込むことこそ、一番危険である。」
ということでした。

知識が増えるほど、世界の複雑さが見えてきます。

そして、不思議なことに、
知れば知るほど、分からないことが増えていく。

だから本当に学ぶ人ほど、自分が知らないことを知っています。
それが「無知の知」です。


西洋は「答え」を探し、日本は「道」を歩く

ここで面白いのが、日本独特の「○○道」という考え方です。

茶道。
華道。
剣道。
書道。
香道。

どれも、
「これが正解です。」
とはあまり言いません。

あるのは、
「続けなさい。」
という考え方です。

西洋の学問は、真理を説明しようとします。
一方、日本の「道」は、真理を説明するのではなく、
真理に近づこうとする姿勢そのもの
を大切にしています。

ゴールを目指すというより、
歩き続けることが修行なのです。


真理はゴールなのか

では、真理とは何でしょう。
もし真理がゴールなら、いつか人類はすべてを知り尽くくす日が来るのでしょうか。

私はそうは思いません。

真理は、
山頂ではなく、地平線なのだと思います。
歩けば歩くほど近づくように見える。

でも、その先にはまた新しい景色が広がる。
だから終わりはありません。

数学者も。
科学者も。
映画監督も。
芸術家も。
職人も。

「これで完成だ。」
とは言いません。

知れば知るほど、新しい「なぜ」が生まれるからです。


「道」が人を育てる理由

「道」とは、技術を磨くことではありません。
人を磨くことです。
剣道は剣術だけではない。
茶道はお茶だけではない。
香道は香りだけではない。
映像だって同じです。

編集技術を学び続けるうちに、
「なぜ人は感動するのか。」
「なぜこの映像は伝わるのか。」
「なぜ自分はこの表現を美しいと感じるのか。」
そんな問いへと変わっていきます。

いつの間にか学んでいるのは映像ではなく、
人間そのものなのです。


答えよりも、問い

探求には終わりがありません。
だからといって無意味ではありません。

むしろ、その終わりのない道こそが、人を成長させます。

もしかすると人生とは、
答えを集める旅ではなく、
より良い問いを見つけ続ける旅なのかもしれません。

ソクラテスが二千年以上前に語った「無知の知」は、現代でも色あせません。
知れば知るほど、自分の知らなさに気づく。
だからまた歩き始める。

それが学問であり、
それが「道」であり、
そして、人間という存在なのだと思います。


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