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「シネマトグラファー」って名乗ればカッコいい? ビデオカメラマンからちょっと言わせてください【お役立ちコラム】

約6分

最近、映像制作の世界でよく見かけるようになった肩書きがあります。
「Cinematographer(シネマトグラファー)」
カッコいい。
とてもカッコいい。

名刺に書いてあったら、なんだか映画館の暗闇から35mmフィルムを抱えて出てきそうです。
しかし、映像制作を仕事にしている人間として、ときどき思うことがあります。

あなた、本当にシネマトグラファーですか?

今回は少々意地悪なテーマです。
世の中の「なんちゃってシネマトグラファー」に、ビデオカメラマンから少しだけ物申してみたいと思います。

そもそもシネマトグラファーとは?

Cinematographyは、単純に「カメラで映像を撮ること」とまったく同じ意味ではありません。
映画などの映像作品において、レンズ、構図、照明、露出、カメラワーク、色彩などを使い、
「この作品をどのような映像として表現するのか」
を設計する仕事です。

映画の世界では撮影監督(Director of Photography / DP)がその中心的な役割を担います。

もちろん現在では映画だけに限定されず、CM、ミュージックビデオ、企業映像などでもシネマトグラフィーという言葉は使われます。

ですから、「映画を撮っていない人がシネマトグラファーを名乗るのは間違い!」
と言いたいわけではありません。
映像作品のビジュアルを設計し、それを撮影によって表現する。

それなら立派なシネマトグラファーでしょう。
問題はそこではありません。

カメラを持ったら全員シネマトグラファーなのか

最近では一眼カメラでも非常に美しい映像が撮れるようになりました。
Logで撮影して、LUTを当てる。
ジンバルを使う。
被写界深度を浅くする。
スローモーションを入れる。
逆光で人物を撮る。
上下に黒帯を付ける。
完成!

CINEMATIC VIDEO

……ちょっと待ってください。

それだけでシネマトグラフィーなのでしょうか。
もちろん、それらは映像表現の立派なテクニックです。

しかし、「映画っぽく見える撮影技法を使った」ということと、「映像によって作品の世界を設計した」ということは、似ているようで少し違います。

ましてや仕事内容を見てみると、ごく普通の記録撮影。

それなのに肩書きだけ、
CINEMATOGRAPHER
となっていると、長年「ビデオカメラマン」と呼ばれてきた側としては、

ビデオカメラマンじゃダメなんですか!?
と、少々言いたくなるわけです。

「ビデオカメラマン」ってそんなにダサいですか?

確かに「ビデオ」という言葉には、少し昔っぽい響きがあります。
「ビデオ撮っておいて!」
と言われると、なんとなくお父さんがハンディカムを持って運動会を撮影している姿が浮かびます。

Videographer、Filmmaker、Cinematographer。

英語にすると、なんだか急にクリエイティブです。

一方、
ビデオカメラマン。
ものすごく普通です。

しかし私たちは、この普通の名前がそれほど嫌いではありません。

なぜなら、
何をする人なのか一発で分かるからです。

そして何より、ビデオカメラマンの仕事はそんなに簡単なものではありません。

記録撮影だって、立派な専門技術です

例えば舞台撮影。
幕が開いたら止められません。
「すみません、今のところもう一度お願いします」
なんて言えません。
出演者が次にどこへ動くのかを予測する。
アップにするのか、引くのかを瞬時に判断する。
ピントを合わせる。
露出を見る。
音声レベルを確認する。
残りの記録時間を見る。
バッテリーを見る。
ほかのカメラとの役割分担も考える。

そして2時間後、
全部ちゃんと撮れていなければならない。
派手なカメラワークがなくても、これは立派な技術です。
運動会も、発表会も、講演会も同じです。

映画のような美しいワンカットを作ることより、
「二度と起こらない瞬間を確実に残す」
ことが求められる世界があります。

これはシネマトグラフィーとは違う方向に進化した、映像撮影のプロフェッショナリズムだと思っています。

黒帯を付けなくても、映像の価値は変わりません

もちろん、シネマティックな映像表現を否定するつもりはありません。
むしろ私たちも、映像をより魅力的に見せる撮影技術は勉強し続ける必要があります。

ただ、
「記録映像だから格下」
「ビデオカメラマンという名前はダサい」
「シネマトグラファーと名乗ったほうがプロっぽい」

もしそんな理由で肩書きを変えているのだとしたら、少しもったいない気がします。
カッコいい肩書きを付けなくても、良い仕事は良い仕事です。

逆に、
肩書きをCinematographerに変えても、映像が勝手にシネマティックになるわけではありません。

Logで撮っただけでもなりません。
LUTを当てただけでもなりません。
24pにしただけでもなりません。
上下に黒帯を付けてもなりません。
ましてやジンバルでゆっくり歩いただけでは――
……この辺でやめておきましょう。
だんだん敵が増えてきました。

ビデオカメラマン、結構じゃないですか

映画の映像世界を作る人。
CMを美しく撮る人。
ドキュメンタリーを撮る人。
結婚式を撮る人。
舞台を撮る人。
学校行事を撮る人。
ライブ配信をする人。
同じ「カメラで映像を撮る」という仕事でも、求められる能力はそれぞれ違います。
だからこそ、自分の仕事を無理に別の名前で飾らなくてもいいのではないでしょうか。
私たちは今日もビデオカメラを担いで現場へ行きます。
派手な肩書きはありません。
ビデオカメラマンです。
本番が始まれば撮り直しのできない現場で、必要な映像を、必要な画角で、最初から最後まできちんと残す。
それもまた、映像のプロの仕事です。
だから世の中の「なんちゃってシネマトグラファー」の皆さん。
たまには堂々と言ってみませんか。
「私はビデオカメラマンです」と。
意外と悪くない肩書きですよ。

……まあ、名刺に英語で書くなら「Videographer」にするかもしれませんけど。


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