
EDIUSなどの動画編集ソフトで新しいプロジェクトを作るとき、
「59.94i」
「29.97p」
「23.98p」
など、フレームレートを設定します。
では、こんな疑問が出てきます。
30pのプロジェクトからWAVを書き出したら、音声も30pになるのでしょうか?
答えは、なりません。
そもそも音声には「30p」や「59.94i」という考え方がありません。
映像と音声は同じタイムライン上に並んでいますが、
実は時間を記録する仕組みがまったく違うのです。
映像は「1秒間に何枚の絵を見せるか」
まず映像から考えてみましょう。
30pの映像なら、基本的には1秒間に約30枚の画像があります。
イメージすると、
1秒間
映像
│ ① │ ② │ ③ │ ④ │ ⑤ │ …… │ ㉚ │
パラパラ漫画と同じです。
1秒間に約30枚なら30p。
60pなら約60枚。
24pなら約24枚です。
そのため、フレームレートを変更すると映像の時間的な細かさが変わります。
では音声はどうなっている?
音声には「フレーム」の代わりに、
サンプル
というものがあります。
たとえば映像制作でよく使われる、
48kHzという音声。
これは簡単にいえば、
1秒間の音を48,000回測定して記録する
という意味です。
つまり同じ1秒でも、
映像 30p
約30枚
│●│●│●│●│●│…………│●│
音声 48kHz
48,000サンプル
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||……
となっています。
同じ「1秒」を表現していますが、
映像は約30回、音声は48,000回
という、まったく違う単位で記録しているのです。
だから30pでも60pでも音声は同じ
ここが重要です。
たとえば30p / 48kHzのプロジェクトなら、
映像
1秒 ≒ 30フレーム
音声
1秒 = 48,000サンプル
です。
60p / 48kHzなら、
映像
1秒 ≒ 60フレーム
音声
1秒 = 48,000サンプル
24p / 48kHzなら、
映像
1秒 ≒ 24フレーム
音声
1秒 = 48,000サンプル
映像のフレームレートが変わっても、音声側のサンプリング周波数は別に管理されています。
したがって、プロジェクトが30pだからといって、書き出したWAVデータが「30pの音声」になることはありません。
59.94iならもっと不思議に見える
映像制作では59.94iもよく使います。
59.94iでは、1秒間に約59.94のフィールドがあり、それを組み合わせて映像を表現します。
しかし音声にとっては、
そんなことは知ったこっちゃありません。
映像が、
23.98pでも、
29.97pでも、
59.94iでも、
59.94pでも、
音声が48kHzなら、基本的には1秒間に48,000サンプルという独立した時間軸で扱われています。
じゃあEDIUSのタイムラインではどうやって一緒に編集できるの?
ここが面白いところです。
EDIUSなどの編集ソフトでは、
00:00:00
↓
────────────────────→ 時間
映像 [F1][F2][F3][F4][F5]……
音声 ||||||||||||||||||||||||||||||……
というように、
「時間」という共通の物差しの上に、映像と音声を別々の方式で配置しています。
30pなら映像の編集位置は約1/30秒単位で考えやすくなります。
しかし、その下にある音声データそのものまで1/30秒単位になっているわけではありません。
音声はもっと細かいサンプルの集合として存在しています。
48kHzなら「1フレームの間」に音声はいくつある?
ここで数字にすると、さらにイメージしやすくなります。
仮に30fpsとすると、
48,000 ÷ 30 = 1,600
つまり映像のたった1フレーム分の時間の中に、音声は約1,600サンプルあります。
イメージとしては、
映像
1フレーム
┌──────────────────┐
│ 1枚の画像 │
└──────────────────┘
音声
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||……
約1,600サンプル
映像では「まだ同じ1枚の画像」の時間でも、その間に音声は大量のサンプルで波形を表現しているわけです。
だからこそ音は滑らかに聞こえます。
「30pのタイムラインで音声を切ったら1/30秒単位じゃないの?」
ここは編集ソフトによって操作方法が少し変わります。
通常の映像編集ではフレームを基準にタイムラインを操作するため、編集点が映像フレーム境界に吸着することがあります。
しかし、これは編集画面上の操作単位の問題です。
元の音声データそのものが30分割されているわけではありません。
ソフトによっては音声をサンプル単位、あるいはフレームより細かい単位で編集する機能もあります。
この違いは覚えておくと便利です。
WAVを書き出すとき、映像のフレームレートはどうなる?
ではEDIUSなどから、
「音声のみWAVで書き出す」
とします。
このとき必要になる代表的な設定は、
- サンプリング周波数:48kHzなど
- ビット深度:16bit / 24bitなど
- チャンネル:モノラル / ステレオなど
- 音声形式:PCMなど
です。
29.97pや59.94iといった映像のフレームレートは、WAVそのものの音質を決める設定ではありません。
WAVになった時点で、
「私は59.94iのプロジェクトから生まれました」
という情報を通常の音声再生で意識する必要はありません。
48kHzのPCM WAVなら、基本的には48kHzのPCM音声として扱われます。
ただし「映像と音声の同期」は別の話
ここは少し注意が必要です。
「音声にはフレームレートがない」からといって、
映像のフレームレートを何に設定しても同期に一切影響しない
という意味ではありません。
たとえば29.97fpsの素材を誤ったフレームレートとして解釈したり、23.976fpsの映像を24fpsとして速度変更したりすれば、映像の再生時間自体が変わることがあります。
そうなれば当然、音声との同期にも影響します。
つまり、
音声そのものに30pや24pはない。
しかし、
映像側の時間の扱いを間違えれば、映像と音声の関係には影響する。
この2つは分けて考える必要があります。
ちなみに「タイムコード」はフレームで表示される
これも混乱しやすいポイントです。
編集ソフトでは、
01:23:45:15
のようなタイムコードが表示されます。
最後の「15」などはフレームを表しています。
そのため、音声を編集していても画面上ではフレーム単位の時間表示を見ることになります。
しかしこれはあくまで、映像編集ソフトが時間位置を分かりやすく表示するための物差しです。
音声そのものがフレームで構成されているわけではありません。
映像は「フレーム」、音声は「サンプル」
今回の話を一言でまとめるなら、これです。
映像
フレーム(またはフィールド)で時間を記録する
音声
サンプルで時間を記録する
たとえば、
30p + 48kHz
1秒
├─ 映像:約30フレーム
└─ 音声:48,000サンプル
という2つのデータが、同じ1秒という時間軸の上を一緒に走っていると考えると、とても分かりやすくなります。
映像と音声は「同じタイムラインにいる別世界」
映像編集をしていると、映像と音声が同じEDIUSのタイムライン上に並んでいるので、つい同じ仕組みで動いているように感じます。
しかし実際には、
映像はフレーム。
音声はサンプル。
という別々の仕組みです。
だから29.97pのプロジェクトからWAVを書き出しても、「29.97pのWAV」にはなりません。
59.94iから書き出しても、「インターレース音声」なんてものにもなりません。
音声を書き出すときに重要なのは、フレームレートではなく48kHz・16bit・PCMといった音声側の設定です。
そしてこの仕組みが分かると、
「映像のフレームレートと音声のサンプリング周波数は、それぞれ何を表しているのか?」
という映像制作の基礎がかなりスッキリ理解できます。
映像は1秒を何枚の絵で表現するか。
音声は1秒を何回測定して表現するか。
同じ「1秒」を記録しているのに、その方法はまったく違う。
映像と音声の仕組みを理解するうえで、ぜひ覚えておきたいポイントです。
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